青春の相棒「MD」

MDとの初めての出会いは、わたしが中学一年生の頃です。

学校で同級生が何やらカラフルな四角い小型のフロッピーのようなものを数枚持っていため、それは何かと聞いたところ、MDという音楽を録音できる新しい媒体だということでした。今まで外で音楽を聴くという発想自体なかったわたしは、その時ものすごい衝撃を受けました。その後、頑張ってお金をためて、MDプレイヤーとコンポを購入し、たくさんの音楽を録音し外出するときは常に持ち歩いていました。

MDを買ってよかったという体験談はいくつかありまして、今まで、夜遅く部活動の帰り道に街灯のない寂れた田舎道をただ一人歩くとき、とても怖い思いをしていたものでしたが、MDプレイヤーを購入してからは、音楽を聴きながらあるくことで、人のいない夜道を一人で歩くという恐怖感から解放されました。

また、家業の手伝いで春休み中などは延々とベルトコンベアーに荷物を乗せるという作業をしていて、かつては、あの何とも言えないベルトコンベアーの流れる音が耳から離れなくなり、寝る時もベルトコンベアーの音の幻聴が聞こえるというありさまでしたが、MDをプレイヤーを購入してからは大音量で音楽を聴くことで、ベルトコンベアーの音からついに解放されました。

このような体験談は他にもいくつかあり、MDとはまさにわたしの青春時代の相棒だったのでした。

それからしばらくしてまさかプレイヤー自体が無くなるとは夢にも思いませんでした。
たくさんの思い出の録音を何とか聞きたくて、MDからCDへのダビング方法を探しましたが、一番アナログな方法でもダビングの為にプレイヤーを中古で見つける必要があり、デジタルダビングなら高価な機械を買う羽目に…。

泣く泣く数本のFM放送のエアチェックだけを選んで業者にお願いし、CDに録音してもらいました。